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CG集とナコルル中心の創作ノベル


by nero_160r
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第弐話 リムルル・目覚め

私の名前は「ニタイカラペ」 
私がナコルルの守護精霊として狼の姿に成り、彼女の家族達と暮らし始めてから多くの季節が巡った。
始めの頃は、人間と暮らす事にもこの狼の身体にも戸惑いが有り色々と苦労もしたけど、今じゃまるで
生まれた時からこの姿でここに住んでいたかのように思えるほどに成っている。
でも、ナコルルの双子の姉レラには未だに慣れない。
理由は解らないけど、なんとなく私を避けている感じがして、とても近寄りがたい。
一緒に暮らしだして、すぐにその事をママハハのじいさんに言うと
『そうか、そう言う風に見えるのか まだまだ未熟じゃな』
と笑い飛ばされた。
何が未熟なのか聞いたけど、それ以上は教えてくれなかった。

逆になにかに着けてちょっかいを出してくるのが、ナコルルの妹リムルル。
コタンに来た当初、子供達は私の姿を見ると逃げるか泣くかだった。
でも、リムルルは私を恐れることなく普通に接してくれた。
リムルルと遊んでいる私の姿に安心したのか、他の子供達も私を怖がることも無くなった。
その時は、本当に感謝した。
でも、季節が巡って大きくなったリムルルを見てふと思った・・・「彼女にとって私は子分?」と

ナコルルやレラは巫女見習として母親の手伝いで出かけることが増え、必然的に私とリムルルが二人で
お留守番と言う事が多くなった。
『少しでもみんなの役に立ちたいから、晩御飯の用意ぐらいはあたしがするんだ。』
と活き込む辺りは可愛いと思うし食材探しに森へ一緒に行くのも別に構わない。
ただ、やたら変わった食材を求めたがるのと後先考えないで突っ走るのが合わさって、無事に帰って来れた事が無い
道に迷う。河に落ちる。は当たり前で、崖から落ちかける事も珍しく無いし(何回か本当に落ちたし)
熊に追いかけられた事も数回・・・
私が一緒に居たから事無きを得てるけど、リムルルは全然懲りてなく
『今度こそは姉さまに喜んで貰うんだ』
と活き込んでは森へ食材探しに出かけて行く。当然、私を引き連れて

今日は朝からナコルルもレラも母親と出かけていて夜まで帰らない。
当然のように3人を見送った後、リムルルは私を引き連れて森に出かけた。
『夜までに戻れば良いんだから、今日はちょっと奥まで行くよ』
止めても無駄なのは解かっているけど、一応止めて見た。
『解かってないなぁ
新しい食材を見つけるのに、少々の危険は覚悟しないとダメなんだよ。』
と呆れたような口調で返された。
「何も、危険を犯してまで新しいのを見つけなくても近くで取れる食材でもご馳走は作れるでしょ。
それに仮に新しい食材を見つけたとしてもリムルルが怪我したらナコルル達が悲しむだけよ」
リムルルはナコルルを心底尊敬し慕っている。だから、「ナコルルが心配するよ」と言えば引き下がる
と思ったんだけど・・・
『うっさいなぁ ナコルル姉様を悲しませる事をあたしがするわけ無いでしょ
ようは、怪我をしなけりゃ良いだけじゃない。』
とあっさり返された。
『大体、仮にってどう言う事よ。今日こそは凄いのを見つけてレラ姉様の鼻を明かしてやるんだからね
うだうだ言ってないで、さっさと行くよ。』
毎回苦労してる割には近くで取れる物ばかり・・・ナコルルはその苦労を労ってくれるけど、レラには
何時も冷たく鼻で笑われている。どうやらリムルルはそんなレラを見返したいらしい。

そんなやり取りの後、私達は森に入って行った。

そして今は見知らぬ川原にいる。すでに日は傾き夕焼けで空が赤く染まっている。
『はぁ今日もだめだったかぁ』
頬杖をついて隣に座り込んでいたリムルルがポツリと呟いた。
そう、今回の食材探しで見つけたのは、ウバユリの群生地、しかも時期的に考えても、実入りまだまだ
先なので取っても意味が無い。
「仕方が無いじゃない。そろそろ帰らないと遅くなってナコルル達が心配するよ」
今はまだ明るいがすぐに暗くなる。暗くなる前には帰り道を見つけておかないと・・・
そう思ってリムルルに声を掛けてみた。
『そうだね、姉様に心配を掛けちゃ行けないもんね。くそぅ今日もだめだったかぁ』
そう悔しそうに言うリムルルが何故か笑いがこみ上げて来る。
『何、笑ってんだよ』
笑いをかみ殺したと思ったけど、リムルルは察したみたいでジト目で睨みながら私の顔を覗きこんで来た。
「なんでも無いよ気にしないで それより、次に期待しようよ」
『そだね』
そうして私達はコタンに戻る事にした。
「・・・あれ」
コタンに向かっていると、途中から急に森の雰囲気が変わって方向が全然わからなくなった。
『どしたの?』
そんな私を察したのか、心配そうにリムルルが声を掛けて来た。
「うん なんだか森の雰囲気が変わっちゃって方向が解からなく成っちゃったの」
言ってから「しまった」と思ったけど遅かった。
『えぇ方向が解からないって、それじゃまるっきりの迷子じゃないかぁ
ニタイカラペがちゃんと帰り道を憶えてると思ってるから、安心してたのに信じらんない』
そうかぁだからあんなに何も考えないで見知らぬ森にも入って行けるんだ。と思わず感心してしまった。
「てっそうじゃ無いでしょ 大体・・・」
とそこまで言い掛けた所で前に草陰から黒い影がのそりと現れた。
はっとしてその方向に目を遣ると、凄く大きい猪がこちらを睨んでいた。
『ニタイカラペ・・・』
猪に気付いたリムルルは怯えたように私に近づいてくる。
「ガルルル」
私はリムルルを背後に庇うように前に出て、猪を威嚇した。
大きいとは言え所詮は猪、威嚇すれば引き下がるだろうと思っていた。
所がいきなり私達に向かって突進して来た。
向かって来るなんて考えてなかったから、咄嗟にリムルルを押し倒すように避けるのがやっとだった。
『いった~い いきなり何すんだよ』
いきなり押し倒されたリムルルが私に対し文句を言う・・・てか、なんでそんな余裕が有るのか不思議
あぁ今はそんな事を考えてる場合じゃない 猪が再び私たちに向かって突進してきた。
「早く木の上に登って」
リムルルにそう言うと私は猪に向かって行った。
この身体に成った時は熊を倒せたんだ、猪ぐらい・・・そう思ったから正面からぶつかって行った。
「ぎゃん」
所が吹っ飛ばされたのは逆に私の方だった。
クラクラする頭を振りながら立ちあがると、悠々とこちらを睨んでいる猪が目に入る。
その目は赤く充血し、口からは涎が垂れている。明らかに普通じゃない。
『ニタイカラペ~』
木の上からリムルルの心配そうな声が聞こえてくる。
「私は大丈夫だから、けりが付くまで降りてくるんじゃないよ」
そうリムルルに声を掛けた所に再び猪が突っ込んで来た。
まともにぶつかったんじゃ勝ち目が無い。だから今度は寸前で避け、首筋に噛み付きそのまま押し倒そうとした。
しかし、猪は噛みつかれていることなんか意に返さず私を振り落とそうと暴れまくる。
余りにも激しさに離れると、間髪入れずに突進してくる。私は同じように避け首筋に噛み付く。
何度かこれを繰り返した後、私が噛みついた時、猪は暴れず私を載せたまま木にぶつかって行った。
「ぐはっ」
咄嗟に猪の身体を蹴って飛びのいたから木に叩きつけられる事は避けられたけど、無理矢理だったから
体勢が崩れ着地が出来ずに地面に叩きつけられた。
全身に走る痛みに堪え起き上がった所に猪が突っ込んで来た。
「がっ」
今度は避ける余裕も無く私はそのまま吹っ飛ばされてしまった。
懸命に立ち上がろうとしたけど足に力が入らない、それに少し動くだけで全身に激痛が走る。
『ニタイカラペしっかりして』
そんな時、霞む目に飛び込んで来たのはリムルルの顔だった。
「リムルル・・・危ないから木を降りてきちゃ駄目じゃない ここは私に任せなさい。」
驚きながらも必死で立ちあがり、リムルルの前に出ようとしたが立ちあがるだけで精一杯だった。
『酷い怪我なんだから大人しくしてなよ 猪ぐらいあたしが追い払ってあげるよ』
引き攣った表情から強がっているのは一目瞭然だった。
『さぁ来い 何時までも守られてばっかりじゃないんだぞ あたしだってニタイカラペを守るぐらい出来るんだ』
しかも、武器らしい武器なんか持ってないから両手を前に突き出しているだけ・・・余りにも無謀過ぎる。
「だめよ、リムルル あいつは私が食い止めるから早く逃げて あなたに何か有ったらナコルルが悲しむじゃないの。」
無謀な事をリムルルにさせる訳には行かない。
『ニタイカラペに何か有っても姉様は悲しむよ だから、ここはあたしに任せなさいって
猪ぐらいあたしが本気になったらお茶の子さいさいだよ』
リムルルは振るえながらもあくまでも強気な態度を崩さない。
しかし、そんな事には関係無しに猪が今度はリムルルに向かって突進してくる。
このままじゃリムルルが危ない、お願いナコルルを助けたときの様に力を 私に力を与えて 私は心底そう願った。
不意にあの時に感じた力の流れを感じた。でも、今度は私じゃなく別の所に集っている。
『ブギィ』
力の流れを感じた瞬間、猪の悲鳴が聞こえた。
「えっ?何が起こったの」
恐る恐る目を明けて見ると、リムルルが突き出した両手の先に透明な物が浮かんでいた。
リムルルも驚いた表情をしていたが、何かに頷いている。
少しすると不敵な表情を浮かべ
『うん、解かった それじゃ行くよコンル!』
そう叫ぶと猪に向かって走り出し、まるでその透明な物を投げつける様に両手を突き出した。
その動きに合わせ透明な物が猪に向かって飛んでいく。しかも、途中から無数の棘が生えた形に変わって。
私の牙の何倍も有る棘が無数に生えた物に体当たりをされては流石に狂暴化した猪と言えど逃げるしか
無かったようで、一目散に森の中に姿を消してしまった。

『ニタイカラペ 大丈夫?』
猪の姿が見えなくなったのを確認するとリムルルが心配そうに私の方に駆け寄って来た。
「うん、なんとか それよりもそれなんなの?」
身体の痛みを忘れるぐらい気に成っていたので、まずその透明な物の事を聴いてみた。
『えっこの子? えとね、名前はコンルって言ってね、なんでもあたしの声を聞いて助ける為に来たんだって。』
リムルルを助ける為に  そうかさっき感じた力の流れはコンルの為だったんだ。
じゃコンルはリムルルの守護精霊って事なのかな?
そう思ってコンルに話しかけてみたけど、なんか返事は音ばっかりで何を言ってるのか全然解からない。
もっともリムルルには意味が解かるようでちゃんと話せてるみたいなんだけど。
『ニタイカラペ歩ける? コンルがコタンまで案内してくれるって、早く帰らないと怒られちゃうよ』
「確かに、もう真っ暗だもんね 早く帰らないと  ナコルル達、心配してるだろうな」
まだ全身の痛みは残っているけど、歩く事ぐらいは出来るまでには戻っていた。
コタンよりもう少しと言う所で私達はレラに出会った。
いきなり目の前に飛び出して来た時は驚いたけど、どうやら帰りが遅い私達を心配して探していたらしい。
リムルルや私の怪我を確認し
『リムルルは無傷、ニタイカラペも打ち身だけだから大した事は無いね
じゃさっさと帰るよ チセで母様やナコルルが心配しているからね。』
そうとだけ言うと、レラはさっさとコタンに向かって歩き出した。
当然、思いっきり怒鳴られると思っていた私はちょっと拍子抜けした気分だった。
それにしても、打ち身だけって 全身バキバキなのにぃ
チセに着くと待っていたのは、ナコルルのお出迎えとそれに続く説教だった。
特にリムルルは母親とナコルルの二人から説教を受け、かなり堪えてたみたいだった。

それとコンルなんだけど、ママハハに聞いたらやっぱりリムルルの守護精霊だった。
ただ、リムルルの巫力はまだ未熟な為に私みたいに動物を模した姿が取れず氷その物の姿でしか形作りが
出来なかったんであんな姿で現れたらしい。
私の場合はあくまでもナコルルの守護精霊なんで、ナコルルと余りにも離れてしまうと巫力を得られずに
本来の力が出せないらしい だから、熊には勝てたけど猪に負けたんだ。
この辺は修練を詰んで自分自身の力を上げるしかないらしい ん~未熟ってそう言う事だったのか

まぁ今日はリムルル以外みんなお出かけだしゆっくりしてよ  えっリムルル以外・・・
『ニタイカラペ 食材探しに森に行くよ 大丈夫、コンルが居るんだから迷う心配は無いし安心だよ』
あぁ懲りてない~
by nero_160r | 2008-06-01 23:19 | 風が守りし者(ノベル)